稲盛和夫著書「稲盛和夫の経営塾」で印象に残った所を抜き出してみた。

印象に残った本

本著は2005年3月に刊行された「実学・経営問答 高収益企業のつくり方」を改題し、文庫化したもので、改題後の本著は2007年11月発行。

著者紹介
 京セラ名誉会長。1932年生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長を務める。84年には第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。2001年より最高顧問。また1984年には稲盛財団を設立すると同時に「京都賞」を創設。

印象に残った所を抜き出してみた。

P17~18
 京セラの経営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と定めました。このように経営の目的を明確にした瞬間から、私には何をするにも迷いがなくなり、みんなのためにいかなる苦労もいとわないという、新たな決意が湧いてくるのを感じました。
 それ以来、私はいい加減な仕事をしている従業員を見つけると、「あなたを含めた全従業員の幸福のために会社はあるのだから、みんなで一生懸命に働かなければならない」と叱るようになりました。全従業員のためという大義名分があったからこそ、私自身、何の気兼ねもなく、従業員に対して堂々とリーダーシップを発揮することが出来たのです。誰もがその実現を心から望み、苦労もいとわず努力しようと思うような大義名分が存在すれば、全従業員は力をひとつに合わせることができるのです。

P72
 私は経営者として「有意注意」で判断するようにしてきました。
 有意注意とは、どんな些細なことでも、意を注ぎ、意識を集中させて、物事を判断することです。そのためには、普段よりどんなことに対しても、気を込めて取り組み、真剣に考える習慣が必要です。
 この習慣を身につけるには時間がかかりますが、いったん身につくと、研ぎ澄まされた集中力により、迅速かつ的確に判断できるようになります。
 多角化を成功させるには、どんなに忙しくても、この有意注意で判断することが、経営者に求められるのです。

P76~77
 企業は多角化という坂道を登りながら大きくなり、安定期を迎え、また次の坂道を登るといったプロセスを繰り返しながら成長していきます。ところが、最初の多角化が成功して、会社がある程度の規模になった頃に、思わぬ危機が訪れるのです。
 それは、経営者が有頂天になり、いつのまにか「天狗」になることです。多角化を成し遂げるほどの才覚ある経営者であれば、負けん気が強いので、「オレのおかげで成功した」と自信過剰になるものです。その結果、多角化を成功させるためには努力を怠らなかった経営者が、謙虚さを忘れてしまい、いつしか鼻持ちならない傲慢な人間になってしまうのです。
 そうなると、周りの人心もいっきに離れてしまい、会社は急速に傾いていきます。
 そうならないように、私は盛和塾の塾生などに、たとえ事業が成功したとしても、「謙虚にしておごらず。さらに努力を」と教えています。
 多角化という厳しい上り坂を越えて自信をつけても、経営者は決して謙虚さを失ってはなりません。企業を成長させ続けるためには、どんな成功にも驕らぬよう、経営者の人間性を高めていかねばならないのです。

P100
 企業経営に何が大事かと言えば、トップが従業員を魅了し、経営者の思うことを従業員が積極的に行ってくれるようになることに尽きると思うのです。そのためには、経営者は、素晴らしい才能を持った上に、従業員を魅了する資質、つまり、従業員が惚れ込んでくれるような人間性を身につけていなければなりません。
 また、経営理念が経営の根幹であると言っていますが、従業員が心から賛同し、「なるほど、社長の言う通りだ。私たちも頑張ろう」と、共鳴してくれるような経営理念が会社になければなりません。

P106~107
 買収では新しい経営者にみんなが心からついてきてくれるということが一番大事なのです。力の論理で相手を屈服させ治めていくのか、それとも徳や人間性をもって治めていくのか。それによって、買収後の経営はまったく違ってきます。買われる側も買う側も、みんなハッピーだと思うような買収をすれば、絶対に成功するのです。
 買収した新会社は、権力でも、財力でも、技術力でもない、経営者の徳をもって治めていかなければなりません。あの人とならぜひいっしょにやっていきたいと思わせる徳を積み、相手の会社を従えていくのです。これがM&Aを真に成功させる秘訣ではないかと思います。

P187
 トップが旗を振れば、「社長、やりましょう!」と。あなたを後押ししてくれるナンバー2、ナンバー3がいなければならないのに、そうでないことが問題です。しかし、これはあなたの会社だけの問題ではなく、たいていの会社が抱えている問題なのです。
 社長を後押ししてくれる人材をいかに育成するか。それが、伸びていく会社になるか、低迷する会社で終わるかの分水嶺となります。

P190~192
 私は、仕事ができない人については、その人の仕事や会社に対する気持ちがどうなのかということを最初に問います。
 もし、その人が会社のために一生懸命、誠実に働こうとされているならば、大事にしていこうと思います。
 ~会社に対して愛情も尊敬もあまり持っていない。給料のために努めているだけで、この会社でなくてもいいという人、一生懸命やる気がない人であれば、時期を見て辞めてもらうことを考えるべきだと思います。それは冷たい仕打ちではありません。相手が一途に惚れてくれているのに、それを切るというのなら、たしかに冷たい仕打ちでしょう。しかし、この場合は、相手の心が冷たいから、こちらもそうせざるを得ないのですから仕方ありません。
 一番難しいのは、会社が好きでがんばってくれていても、仕事はあまりできないという人をどう遇するかという問題です。
 同じ給料ならば、もっと仕事ができる人を雇ったほうが、割がいいに決まっていますが、それでも、私は会社が好きで一生懸命働いてくれる人であれば大事にすべきだと考えています。

P192~193
 京セラがまだ中小企業の頃、よその会社を見れば、気の利いた従業員がたくさんいる。それに比べ、ウチの従業員はと見ると、「こんな鈍い人ばかりでは、会社が大きくなるはずがない」と嘆いていました。ところが、この人は能力的にどうかなあと思ったような人に限って、会社に残って一生懸命、がんばってくれました。会社をこよなく愛し、身を粉にして働くものですから、その人自身がやがて立派な幹部として成長していき、会社に大きく貢献してくれるようになったのです。
 一方、中には、目から鼻へ抜けるほど気が利いている人もいました。頭もいいし、仕事もできる。コンパの時も私の横に来て、二言目には「社長を信頼しています。どんなことがあろうとも、私は社長について行きます」と言ってくれます。私にしてみれば、こんな優秀な社員が入ってきてくれてなんと嬉しいことかと喜んでいたのですが、そういう人は、何かあると途端に会社を去っていきました。

P193~195
 私と一緒に京セラを創業した仲間の話ですが、その人は、すばらしい人間性を持っており、仕事にも常に全力で打ち込んでいる人でした。創業時からずっと一緒に苦労してきたのですが、仕事の成果はいまひとつパッとしないところがありました。人はいいのですが、酒飲みで、飲んだら底が抜けるわ、随所でミスをするわで、大事な仕事を任せるわけにはいきませんでした。
 京セラが上場して大きくなってくると、私はその人をいつまでも京セラの幹部にしておくわけにはいかないと思い、赤字続きの子会社に社長として送り込みました。
 創業以来、私と苦労を共にして、今日の京セラをつくった一人です。その人を赤字会社の社長に出した。普通であれば膨れっ面をして、「こんな冷たい仕打ちをするのか、稲盛さんは」と言いたくなるでしょう。
 ところがその人は、その赤字会社に行ってからも一生懸命努力したのです。赤字会社ですから、従業員のモラルもモチベーションも下がっています。そこで、その社長は、京セラ創業のメンバーの一人として大株主なので、その株を処分してポケットマネーをつくり、そのお金で部下に飯を食わせては「がんばれよ」、一杯飲みに連れていっては「がんばれよ」と励まし続けたのです。そうして、従業員を育成しながら、十二年かかって、何十億もあった累積損失を一掃し、会社を再建したのです。
 しかも、それだけの仕事を立派にやり遂げたのに、ちっとも威張らないのです。私が、「あなたには本当に苦労をかけましたね」と労をねぎらうと、その方は「いやいや、私は稲盛会長といっしょに仕事をさせてもらっただけでも幸せです。このくらいのことは当然です」と答えられました。
 こちらも本当に頭の下がる思いでした。石垣を組む時、こういう小さくてもキラリと光る石があるからこそ、城が盤石になるのです。
 筋肉質経営というのは、必ずしもやり手の人だけを選ぶことではありません。やり手の間に、人間味あふれるすばらしい人材がいなくては、会社は成り立たないのです。
 ですから、能力はなくても真に会社のためを思い、役に立とうという人がいたら、そういう人を大事にすることです。目先の役には立たなくても、必ず将来、すばらしい仕事をして、みんなによい影響を与えてくれます。そう信じて間違いないと思います。

感想
 若手経営者の悩みにこたえる内容なので、自然と経営者目線の一冊になっていますが、平の人間でも参考になる内容の一冊になっている。
 個人的には特に「有意注意」と「謙虚にしておごらず。さらに努力を」は耳に痛い内容であった。不真面目な社員だからね・・・・。
 経営側の視点から書かれてることによって、私がまだ務めている会社の経営サイドも従業員に対して色々悩みながら取り組んできたんだろうな、と想像できたのは良かった。それでも、会社として魅力的かと言われれば、総合評価では疑問符が付きますが(苦笑)
 
稲盛和夫さん、すばらしい本を執筆してくださり、ありがとうございます。
この本に関わってくださった全ての皆様、ありがとうございます。
皆様が健康で充実した生活を送れますように!

コメント

タイトルとURLをコピーしました